1.ADASの開発を取り巻く環境について
ACCやFCWといったADASの具体的な機能は、センサー情報に基づいて車載ECUが判断を行い、ドライバーに情報提示を行ったり、自動車を制御したりします。これらの機能を開発する際は、実際の交通環境で起こりうる様々な状況を想定しなければなりません。
また開発には数年単位の期間を要しますが、その間にセンサーなどの技術革新が進むことが予想されるため、
可能な限り最新技術を適用できるようにします。
さらには法令の変更によりADASを作動させる条件が変わる可能性もあります。
このようにADASの開発環境には、多くの変化する要素が関わってきますので、それらに対しての寛容性が必要です。
2.ADASのテストの種類
ADASのテスト環境は、大きく分けて3種類あります。
・仮想空間でプログラム上の自動車を走らせる。
・ミニチュア模型などを用いる。
・実車に必要な装置を組み込み、テストコースや公道での検証をする。
開発の初期段階は、シミュレーション上で行いますが、最終段階ではテストコースや公道で実車を用いて検証を行います。
3.モデルベース開発について
近年は自動車のエレクトロニクス化が進み、1台の自動車に50〜100個の車載ECUが組み込まれています。
車載ECUの開発手法は、「モデルベース開発」が一般的です。モデルベース開発とは、仕様書としてモデルを作成し、そのモデルをシミュレーション内で様々なテストを繰り返すことで、アルゴリズム、ソフトウェアの品質を向上させる手法のことです。モデルベース開発の導入により、開発期間を大幅に短縮することができるようになりました。
モデルベース開発のプロセスは、設計フェーズと検証フェーズに分かれています。前半の設計フェーズはシステム設計、ソフトウェア設計を行います。後半は、設計に基づいたコーディングの後、検証フェーズでソフトウェア検証、適合・評価というステップを経て進みます。
モデルベース開発メリットは、それぞれのプロセスごとに設計内容を論理的に確認ができ、最終工程で不具合が発生するリスクを最小限に抑えることができます。
ADASの各種機能を実現する車載ECUの場合、モデルベース開発の検証段階においては、カメラ、ライダー、レーダーを始めとした外界センサであるハードウェアと実際に接続して、検証を進めます。
4.ADAS開発における固有の要素
ADASには、ACC、FCW、AEBS、TSR、LKASなど、それぞれに固有の機能があります。
機能毎に用いられる外界を認識する各種センサ技術、画像認識技術などのような判定技術、ステアリング操作などの自動車操作技術があり、それぞれの機能別にテストが必要となります。
これらのテストに対する課題は、
・統一されたハードウェアのアーキテクチャが存在しない。
・システムが影響を及ぼすECUの量と種類が多い。
・センシング技術の発達に伴い、データの複雑化、大容量化が進んでいる。
などが挙げられます。