Q. 「ロボタウン」とはどんな街なのでしょうか?
1歳、2歳の子を持つ親の気持ちを想像してください。たとえ整備された東京の街でも、車や自転車にひかれてしまうかも、段差で転んでしまうかも、と考えると、心配で目が離せません。時折、幼い子がひかれてしまう痛ましい事故がありますが、これには道のつくりにも責任があると思っています。
その時、ロボットの力で現状の車を中心とした街から「人間中心の街」へ変えられるのではないかと考えました。こうして、歩行者や高齢者が車を気にせずにゆっくり安心して歩ける街が「ロボタウン」です。
Q. ロボットは「人間中心の街」に対してどのように貢献するのでしょうか?
まず、街にロボットを走らせることで、街のデータをとることができます。その際に、自転車が多い場所や段差が多い道といった、歩行者にとって障害となる場所が、データから明らかになります。これを自治体や工事業者に提出することによって、データに基づいたまちづくりを行うことができます。
毎日見ている街並みに慣れてしまった人間の考えは簡単には変わりません。そこで、ロボットによる客観的なデータを活用し、人間に優しい街を作ることが「ロボタウン」を掲げる意義になります。
また、ロボットはその機能によって人間中心の街に貢献することもできます。例えば、宅配ロボ「デリロ」のフードデリバリーサービスがあります。従来の配達は、人が自転車やバイクを使って行う重要な仕事ですが、暑い日も雨の中でも運ばなくてはならず、非常に大変な仕事でもあります。
私は「ロボットに仕事を奪われる」という表現は間違っていると思います。ロボットに置き換えることができる仕事はロボットに任せ、より創造性を活かす仕事に従事することこそが人間が活き活きとした社会となります。そこに支援が必要であるなら、もちろん支援制度を強化していかなければなりません。このように、ロボットが街に共存することによって、人が重労働から解放され、今までにないチャンスをつかむというポジティブな社会の流れを作るきっかけになると思っています。
Q. 「ロボタウン」は、街の住人にどのような変化をもたらすのでしょうか?
配達や移動の自動化のように、生活がロボットによって便利になるという変化はもちろんあります。一方、心理的な変化もあると実感しています。例えば、歩行速モビリティ「ラクロ」に初めて乗った子どものキラキラした目や、宅配ロボ「デリロ」のフードデリバリーが到着するのをわくわくしながら待つ大人の顔を私は見てきました。
ロボットが生活の一部になるという新しいライフスタイルは、その利便性以上に人々に刺激を与えてくれます。日常を自分から変化させることは非常に難しいです。「ロボタウン」はこのようなマンネリ化してしまう人生を、外側からわくわくした人生へ変化させ、人生において新たな挑戦を促すきっかけになることも期待されます。
Q. 新型コロナウイルス感染症により、人々の生活は大きく変化しましたが、ウィズコロナでの「ロボタウン」のあり方について教えてください。
例えば、歩行速モビリティ「ラクロ」がいます。当初、ラクロは空港で走行することを想定していましたが、感染症の影響で空港利用者は減少しました。この時代に日常の移動空間として最後の砦になるのが、家から徒歩圏内の街であることに気づきました。そこで、街の中で人々の移動をロボットがサポートすることが本当に必要とされていることだと感じ、佃・月島エリアで初の自動運転ロボによるシェアリングサービスを始めました。
また、警備ロボ「パトロ」もウィズコロナで役割を変化させました。地下鉄内でウイルスが籠ってしまい、駅員さん間での感染が拡大してるという状況を聞き、人による消毒ではなく、ロボットによる消毒が必要であると感じました。その結果、パトロに消毒機能を搭載することで、街の中でロボットが人のリスクを肩代わりし、重要な役割を担うことが可能になりました。
このように、ウィズコロナの時代にこそ、街で活躍するロボットの重要性が増してきています。新しい時代の衛生意識や生活様式を追い風に、「ロボタウン」の拡大を全力で推進していきます。
Q. 「ロボタウン」の実現にあたり、重要となる技術について教えてください。
「ロボタウン」では、ロボットが単体で動いている状態では、非常に限定的な作業しかできず、人の手が必要な場面はむしろ増えてしまうこともあります。そのため、街とロボットをつなぐ技術が大切になってきます。そこで、ロボットと街のシステム、そしてロボット同士をつなぐクラウドシステム「ROBO-HI」を開発しました。
例えば、宅配ロボットが他のシステムにつながっていない状態だと、お客さんの注文に応じて、店員がロボットを呼び、荷物を機体内に入れ、届け先を設定します。これをクラウドシステムにつなげると、注文に対し、自動でロボットがお店に行きます。荷物搬入後、自動で届け先へ向かいます。また、エレベーターとロボットがつながることで、マンションにも自分で届けることができるようになります。このように、以前は人の作業を助けてくれて少し便利な存在という位置付けだったロボットが、ロボットと街のシステムをつなげることで、人の手を借りずにサービスを提供する街の重要な構成要素になります。
その他にも、街のあらゆるシステムとロボット、さらには種類の異なるロボット同士をつなぐ「都市OS」を作ることにより、人間が住みやすい街「ロボタウン」を実現することができます。このようなクラウド管理システムの特許をいち早く取得し、街で活躍する自社のロボットたちとともに実用化してきたことは、ZMPの強みとなっています。
◆都市OS
OS(Operating System)とは、コンピューター等において、システム全体を管理するソフトウェアのことを指します。AI、IoTなどの新技術やデータを活用したスマートシティが計画される中、都市や街における機器やサービスをつなげて管理するプラットフォームである「都市OS」が注目されています。
Q. 「ロボタウン」の実現に向けて、企業や自治体、住民を巻き込んだ新しい取り組みを行っていると思います。このような新しいことを行う際に、大切にしていることはありますか?
まずは、構想するものが「世の中にないもの」である点です。そして、その構想が人を喜ばせ、人の役に立つものになれば、みんなやりたくてしょうがなくなると思います。一方、もしそのアイデアが技術的に10年、20年先のものだと人はついて来てくれません。そのため、技術的に2、3年あれば実現可能な少し未来の目標を掲げることが、人をひきつける要因であると考えています。
また、ZMPは30ヵ国以上の国から社員が集まり、エンジニアの半分以上が外国籍と、非常に多様性があります。あえて海外から日本に挑戦しにくるバイタリティあふれる社員が多いことから、会社全体として新しいものに飛びつき、わくわくしながら働く文化が根付いています。このような環境を形成することも、社会にとって新しいものを作る際に大切にしています。
Q. 「ロボタウン」を普及していくにあたり、今後取り組みたいことを教えてください。
「ロボタウン」の普及にあたって、技術的にできないことはほとんどありません。そのため、一番重要なのは「人」です。「ロボタウン」は名前の通り「街」であるため、私一人では到底実現できる規模の取り組みではありません。そのため、一緒に街を作っていく仲間や、そこに住む人々などと協力して、ともに「ロボタウン」を作っていく必要があります。
今後も、自治体や企業、住民の困りごとや、街を良くしたいという想いに対して真摯に耳を傾け、本気で「ロボタウン」に共感し、実現したいと考える人を一人でも多く増やすことに注力していきたいと思っています。
「ロボタウン」は、単にロボットが存在する街という意味だけでなく、ロボットをきっかけに人がもっと住みやすくなり、安心と活気を取り戻すための新たな街の形であることがわかりました。
「ロボタウン」の詳しい情報はZMPビジョンページをご覧ください!
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